先日12月14日は、ふたご座流星群の極大でした。私はその時に滞在していたホテルの部屋から星の軌跡と流れ星を撮影しました。
流れ星単体の画像はこちらです。
この撮影の顛末をご紹介します。
ふたご座流星群
ふたご座流星群は、ペルセウス座流星群と並んで、流星群の中でも多量の流れ星が期待出来る大型の流星群です。12 月中旬のため東京近辺だと時期的に天候に恵まれることも多く、流れ星の撮影に適しています。極大の時間帯では 1 時間に 100 個以上流れるそうで、2021 年に本栖湖で撮影した時には 24mm の画角の中に 1 時間弱で 10 個以上撮影出来ました。
ペルセウス座流星群は 8 月であり、ふたご座流星群と比べて天候に恵まれないことが多い点と、屋外での観測・撮影の場合は虫の対策が必要になる点に注意が必要です。個人的には防寒対策の方が虫対策より楽なのでふたご座流星群の方が好きですが、子供と観測する場合などは防寒の心配が少なく夏休みに合わせられるペルセウス座流星群の方が良いかも知れませんね。
撮影地紹介
ふたご座流星群は明るい流れ星が多いため、都心でも流れ星の観測が期待できます。東京だと、代々木公園や砧公園のような広くて暗がりのある公園だと間違いないでしょう。
今回私が撮影したのは、川崎キングスカイフロントにある「東急REIホテル」の部屋の中からです。川崎から多摩川を挟んで羽田空港を臨む大変展望の良い立地で、平日はビジネス客、週末は観光客で賑わっています。
ただ、星の撮影環境としては最悪に近い条件です。まず川崎の工業地帯の真っ只中であり、多摩川の河原なのである程度暗いのですが、それでもホテル自体の明かりもあります。そして羽田空港は当然ながら夜間も煌々と光り輝いており、またホテルの部屋からの展望が北の方向を向いているため、その先は都心ど真ん中になります。これ以上ない光害のオンパレードですね。
ただし空港があるため建築制限のおかげで空が広いので、その点はとても良い環境です。
カメラの設置
私はこのホテルに撮影目的ではない滞在で来ていたので、撮影機具もそれほど持ってきておりませんでした。カメラは α7R IV 、レンズはFE 35mm F1.4 GM、三脚は Leofoto LS-284C+LH-30 を用意し、またレリーズは個人輸入したノーブランドのやっすいものでした。流れ星はどこに流れるかわからなので、35mm のレンズだと少し画角的に不安です。理想的には 24mm 以下くらいの広角レンズの方が良いでしょう。
その日は部屋で作業する必要があったので、室内からの撮影になりました。段差を利用してこんな感じでカメラを設置しました。
幸いカーテンがしっかりした遮光カーテンだったので、カメラをカーテンの外側に置きました。それでも空港からの強い光がカーテン裏地に反射した光によって若干映り込みが発生したので、何らかの形で携帯暗幕を利用したほうがさらに良い環境になったとは思います。
セッティング
カメラの設定は、ISO 100、F2.2、シャッタースピード 6 秒でした。ずっと放置するつもりでしたのでシャッタースピードを心持ち長めにしていますが、本来流れ星を撮る時はシャッタースピードを短くするのが原則です。
星の撮影の場合は、星の光が微かだとしても露光時間中ずっと輝いてくれています。一方で流れ星の撮影の場合、光は強いものの露光時間中の一瞬しか光りません。なので、例えば露光時間を 60 秒とした場合、1 秒にも満たない流れ星の光は 1/60 以下の光の量しか記録されません。流れ星の撮影には比較的短い時間のシャッタースピードの設定が大切です。
もっともシャッタースピードを短くしすぎると、画像ファイル数が跳ね上がってしまいます。1 秒に 1 枚撮影すると、1 時間で 3600 枚もの写真が発生します。後の処理のことを考えると、自分は 1 回の撮影を出来れば 500 枚前後に抑えたいなと考えることが多く、そういうこともあってシャッタースピードを 6 秒前後にすることが多いです。また、強い光の流れ星の中には数秒以上続くものもあるので、1 秒間隔だとせっかくの強い流れ星が撮影の合間に途切れてしまう危険もあるので気をつけましょう。
あとはホワイトバランスや連写などのセッティングをして、ピント合わせをしっかりし、そしてレリーズでシャッターを固定して連写を開始して待ちます。最終的には 52 分弱、519 枚の撮影になりました。
比較明合成
撮影が終わったら、比較明合成をします。今回はスターペンギンを利用して比較明合成をしました。ブラウザの上ですべて完結するので、仕事マシンに専用のソフトをインストールする必要はありません。連写した画像ファイルをドラッグ&ドロップで放り込んで、処理開始を押すだけで簡単に比較明合成が可能です。私は今回 RAW ファイルで撮影したので、出力は 16bit TIFF、366MB のサイズになりました。それを JPEG に変換したのがこちらです。上の方に写り込みが出ちゃっていますね。
16bit TIFF なので情報量は多くレタッチ耐性も強いので、ここから写り込みが目立たないようにレタッチし、下の光と右の飛行機の光跡を除外するようにクロップして表題の画像に仕上げました。ちょうど良い場所に強い流れ星が流れてくれたのは、とても運が良かったと思います。
まとめ
東京都心近郊の光害のひどい場所でも、星の軌跡や強い光の流れ星であれば撮影は可能であることがご確認いただけたかと思いますが、いかがでしょうか。今回はそれに加えてホテルの部屋の中からという難度の高い撮影になりましたが、それでもかなりの星が撮れていることがご確認頂けるかと思います。皆様の参考になれば幸いです。
比較明合成の基本的な撮影方法は、以前のブログポストで詳解しております。興味のある方は是非こちらもご確認ください。
私は以前、ラスベガスのベラージオホテルからも星の軌跡の撮影をしました。その顛末は拙著「都会で撮る 星の軌跡の撮影術」でご紹介しております。他にも冒頭の本栖湖の流れ星の撮影などの解説もありますので、もし興味があれば是非ご一読頂けましたら幸いです。