Kihira's テックカメラ

カメラ関係の知識・ノウハウなどの公開や、自分の作例や撮影に関する雑談など

作例解説: 六本木ヒルズと蜘蛛のオブジェ

先日、都会で撮る 星の軌跡の撮影術 〜はじめて撮る人から上級者まで比較明合成による撮影の完全ガイドという本を出版しました。その本の6章で様々な作例を撮影データと共に紹介していますが、そこで紹介しなかった作例を本書の形式でご紹介します。

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六本木ヒルズ森タワーを背景に、有名な蜘蛛のオブジェ「ママン」の下から撮った写真です。六本木ヒルズは東京の中心地にあり、都会の明かりもひときわ強い地域ですが、そんな環境でも条件次第でここまで星を撮影することが出来ます。天空を見上げる珍しい構図により、普段とは毛色の違う星の軌跡を撮影できました。

撮影データ:

Olympus E-M1 II + Olympus M.Zuiko 7-14mm F2.8 Pro
焦点距離 12mm(換算24mm)/絞り F2.8/シャッタースピード 2秒/ISO 400/ライブコンポジット1050コマ、計35分/2019年8月17日

大都会の中心の星空

六本木は、東京の中でもひときわ明るい地域です。そんな環境下でも多くの星を写すために、いろいろな工夫をして撮影をしました。

この撮影では、六本木ヒルズと蜘蛛のオブジェを被写体に取り入れています。このオブジェは高さが10mほどとなり、比較的近距離の撮影になるので、オブジェと星の両方にピントが合うように気をつける必要がありました。マイクロフォーサーズの規格はセンサーサイズが小さいためにボケにくく、F2.8で焦点距離が12mmであれば、5mほど距離を離せば無限遠と一緒にピントを合わせることが出来ます。フルサイズの場合は、両方にピントを合わせるためにはF4くらいまで絞る必要があり、そうするとシャッタースピードが長くなってしまい写せる星の量に影響が出てしまいます。この撮影においては、マイクロフォーサーズのメリットを大きく活かすことが出来ました。フルサイズで両者にピントを合わせるには、そこそこ絞る必要があったでしょう。

明るい光の中でも多くの星を写すために、なるべくシャッタースピードを短くしようとしていました。絞りは開放で、基準ISOでシャッタースピードを妥協するか、それともISO感度を上げるか、悩んだ末にISOを基準の200から400にし、シャッタースピードを2秒に設定しました。シャッタースピードを稼ぐことでより多くの星が写る一方で、ISO感度を上げたことでノイズが増え、またダイナミックレンジが狭まります。しかし構図中に暗いところはそれほどないため、ダイナミックレンジが少し狭まっても問題は少ないと判断しました。また少し明るめに撮影してセンサーにしっかり光を当てることで、暗い部分のノイズを発生させないようにしています。

少しでも良い条件で撮影するため、終電が終わった後の深夜に撮影しました。独特の構図もあいまって、都会の無機質な雰囲気に星の軌跡が彩りを与える印象的な写真となりました。

撮影地情報

Google Maps

六本木ヒルズ森タワーの前の、とても有名な広場です。六本木ヒルズはこの場所も含めて良い撮影スポットが多く、冬はライトアップもとても綺麗で撮影目的でも楽しめる施設です。当時は三脚を立てて撮影することが許可されておりましたが、警備員の方が頻繁に巡回されているので、撮影時には一声かけると良いでしょう。人通りが多いので、撮影の際には歩行者の方の迷惑にならないようにくれぐれも気をつけてください。昼間のみならず、深夜でもかなりの通行量があります。三脚を立てる場合も、他の人の迷惑にならない場所で撮影するように心がけましょう。

撮影のポイント

  • 明るいところで星を多く写す時は、シャッタースピードを可能な限り短くしよう
  • 写真の中に明暗差の大きい領域がそこまでない場合は、ISOを高くすることも検討しよう
  • ISOを高くする時には、暗い部分のノイズの発生を抑えるため明るめに撮影してみよう
  • 近距離の被写体の撮影時は、星と被写体の両方にピントが合わせられないか挑戦してみよう

書籍の紹介

書籍では、このような星の軌跡の写真の撮り方について紹介しております。6章では、この記事と同じスタイルで色々な作例の紹介をしております。興味があれば是非お手にとって頂けましたら幸いです。

都会で撮る 星の軌跡の撮影術 〜はじめて撮る人から上級者まで比較明合成による撮影の完全ガイド