Kihira's テックカメラ

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加算平均合成の基本と作例

この前加算平均合成を試した結果、Tamron 28-200mm F2.8-5.6 というリーズナブルな便利ズームレンズでも綺麗なオリオン大星雲が撮れました。α7R IV に初代ポラリエを使って撮りました。


ここでは加算平均合成(加算平均コンポジット)がどのようなものなのか、少し解説します。

加算平均合成の計算式

加算平均合成は、複数枚の写真を合成する方法の一つで、すべての画像の画素を足し合わせ、その平均をとる合成です。例えば3枚の画像の加算平均をするとして、左上のピクセルの明るさが 10%、40%、52% だったとすると、出力画像は (10% + 40% + 52%) / 3 = 34% 、34% の明るさになります。

当然ながら、すべての画像が同じ明るさを持っていれば、何の意味もない合成になります。それは比較明合成と同じですね。

加算平均合成の効果

加算平均合成は、主に天体写真などで同じ条件で複数枚の撮影を行い、それらの写真を合成する形で使われます。もしカメラが完璧に光を捉えているならば、すべての写真が同じ明るさを持っているはずなので、全く意味のない合成になります。

しかし実際には、センサーで撮った写真には常にノイズが乗ります。ノイズは高感度になればなるほど増え、そして天体写真では星の日周運動(星の動き)によるブレを防ぐために高感度で撮影することが多いので、ノイズは大きな問題となります。

高感度ノイズは長時間ノイズとは違い、全体に均一に乗ります。ざっくり言うと、本来の明るさが 30% であるピクセルがあったとして、ノイズが 5% 乗ってしまうと、そのピクセルは 25% 〜 35% の何らかの値になってしまう、というようなイメージです。

1 枚目の画像だけ見ると、そこは 27% と記録されていました。これでは本来の明るさはわかりません。しかし 2 枚目の画像を見ると 35% だったとしましょう。その場合、 (27% + 35%) / 2 = 32% 、32% の明るさの可能性が高まります。これを、3 枚、4 枚、…と増やしていくと、より本来の値である 30% に収束していきます。

このように、すべての画像を足し合わせて平均をとることで、ノイズのない本来の明るさに近づくことが期待できるのです。よって、 加算平均合成は、複数枚撮影することでノイズを減らす目的で行われます

何枚の平均をとれば良いのか

加算平均合成のノイズ除去の効果は、枚数のルートに比例します。1 枚に比べて、例えば 9 枚の加算平均合成をすると 3 倍の効果、64 枚なら 8 倍の効果です。効果が log カーブを描くので、枚数を大量に増やしても効果は限定的になってしまいます。

では何枚の合成がベストなのか、というのが気になるところですが、状況に応じて変わります。そもそもノイズが乗らないのであればわずかの枚数でも効果的ですし、ノイズがたくさん乗るようなら複数枚の合成を考えたほうが良いです。現実的には、例えば 30 分なり 1 時間なりと時間を決めて、その時間で撮れた枚数で加算平均合成するのが良いかもしれません。

加算平均合成の出力例

今回のオリオン大星雲の撮影で、加算平均合成の枚数と結果を比較できるようにしてみました。よければ参考にしてみてください。

撮影データは ISO 6400 188mm F/9.0 SS 30 秒、出力の 9536 x 6376 を 3120 x 2079 まで約 3 倍クロップしています。加算平均合成は Sequator で行いました。

64枚
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